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>アラン・デュカス氏インタビュー

シャトー&ホテル・コレクション会長、アラン・デュカス氏が語る「フランスの食と旅はこう楽しむ」

アラン・デュカス氏

パリ、モナコ、ロンドンに3つ星レストランを持ち、フランスを代表する名シェフとして知られるアラン・デュカス氏。世界8カ国に24のレストランを経営、プロデュースするかたわら、魅力的なホテルやオーベルジュが多数加盟する「シャトー&ホテル・コレクション」の会長も務めています。ワールドワイドに活躍を続けるデュカス氏に、フランス料理の魅力から地方を旅する楽しみまでうかがいました。

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「食材」のおいしさを「本来の形」で伝えること

ご自身の考えるフランス料理の真髄についてうかがいます。現在プロデュースされているレストランにおいて、料理そのものはシェフにまかせるスタイルをとっておられますが、必ず守るべきとされているものは何ですか?

 フランス料理で最も大事なのは、もともと地元にある良い食材を使い、優秀なシェフが作ることです。フランス語では「ブリュット」といいますが、人の口に合わせるのではなく、食材のおいしさを「本来の形」で伝えること。それは料理人としての責任だとも感じています。どの国であっても、どのジャンルであっても、この精神は変わりません。
 レストランというものは、3つ星クラスの高級店から伝統的なビストロまで、それぞれストーリーをもっています。その筋立てを考えるのは私の役目です。根底に流れるエスプリやコンセプトを深く理解しているシェフたちは、基本的な考えに沿いつつ、その土地ごとの食材を使ってメニューを構成します。新しい提案が出されたときは、私自身が確認したうえで形にします。こうして、同じ精神に基づきつつ、シェフの個性が反映された店として、ストーリーが紡がれていくのです。

最近、パリでチョコレート専門店「ル・ショコラ・アラン・デュカス・マニュファクチュール・ア・パリ」(※1)を開かれたそうですね。工房を併設した店と聞いていますが、どのようなねらいがあったのでしょう。

 パリで昔ながらの手作り製品を復刻したい、という気持ちが前々からありました。今は皆、工場で大量生産されたものに慣れてしまい、チョコレートがどのように作られるかなど、知らない人がほとんどです。だから、パリのど真ん中に工房を作り、伝統的な手法で、実際に生産しているところを見せようと考えたのです。調べたところ、パリの中心地でチョコレートの工場が開業したのは歴史上初めてだそうですよ。先ほどお話したフランス料理の真髄にも通じますが、チョコレート本来のおいしさを伝えるのに、最良の方法だと自負しています。

2011年9月、東日本大震災の被災地釜石で復興ディナーを開催されました。そのときの思いはどういったものでしたか?

 長年仕事をさせていただいて、日本や日本人に対しては特別の思いがあります。震災の後、スタッフと協力して何かできればと考え、復興ディナーを開いたのがちょうど震災から半年後、9月11日です。私たちには被害に遭われた方々に対して、その状況を変える力など持ってはいません。ただ、非日常的な時間というささやかなプレゼントをお渡しすること、一瞬のちょっとした幸せ、一筋の太陽の光を演出することが、自分たちにできる唯一のことだと考えたのです。

フランスの魅力はその「多様性」にある

1999年、ホテルチェーン「Châteaux et Hotels de France (現シャトー&ホテル・コレクション)」の会長に就任されました。古城ホテル、オーベルジュなど、個性的なホテルが数多く加盟していますが、メンバーにはどういったことが求められていますか?

 フランスは、ひとつの国であると同時に、さまざまな個性をもった地方の集合体でもあります。「シャトー&ホテル・コレクション」のメンバーは、それぞれの地方を代表する存在でもあり、国際スタンダードのサービスを実現しながら、地元の色を出すことが求められています。土地ごとに異なる個性、そしてフランスの多様性を直に味わうことができるのが「シャトー&ホテル・コレクション」の魅力といえるでしょう。
 フランス国内のメンバーのなかには、私自身が経営するオーベルジュ(※2)がふたつありますが、ここでも地元の良さを反映するため、工夫をしています。地元の食材を使うのはもちろんのこと、自家菜園で育った採りたての野菜を食卓にお出しします。ときには、宿泊客自ら野菜を収穫して、シェフと一緒に料理、なんてこともありますよ。家を訪ねるような、そんなリラックスした雰囲気を味わっていただきたいと思っています。

これからフランスを旅しようと考えている人に、旅を楽しむためのコツ、アドバイスをお願いします。

 まず、毎日慌ただしく移動するのではなく、1ヵ所でじっくり滞在することです。そうすれば、町をゆっくり歩く時間ができます。なかでも、マルシェ(市場)に行ってみるのはおすすめですね。私自身マルシェが大好きですが、どんな食材があるかだけでなく、そこで暮らす人たちの気質まで伝わってくるから不思議です。ホテルに着いたら、地元の市場がどこにあるか聞いてみましょう。コミュニケーションが広がるかもしれませんよ。
 旅を楽しむのに大切なのは柔軟性と好奇心です。フランスの地方ごとに異なる個性、日本とフランスの相違点など、いろいろな「違い」を受け入れ、楽しめるようになれば、最高の旅となるに違いありません。

アラン・デュカス氏 アラン・デュカス
Alain Ducasse

フランス南西部ランド県の農家で幼少期を過ごし、12歳で料理人を志す。27歳で南仏ジュアン・レ・パンのレストラン「ラ・テラス」にてミシュランの2つ星を獲得。1987年にはモンテ・カルロにある「オテル・ド・パリ」のレストラン「ル・ルイ・キャーンズ」の総料理長に就任、33ヵ月後には史上最年少で3つ星を獲得した。その後、パリ、ロンドンなどでも星を獲得。世界で最も多くの星を持つシェフとして、フランス料理界の最前線に立ち続けている。現在は、自らのエスプリを体現するレストランを世界各地でプロデュース。日本でも「ベージュ アラン・デュカス 東京」、「ブノワ」、「ル・コントワール・ド・ブノワ」の3店舗を運営するほか、フランス料理の魅力を伝える活動も積極的に行っている。2013年2月には、パリ、バスティーユ地区に工房を備えたチョコレート専門店をオープン、グランシェフの新たな創作活動に注目が集まっている。

(※1)チョコレート専門店

ル・ショコラ・アラン・デュカス・マニュファクチュール・ア・パリ 2013年2月にオープンしたチョコレート専門店。工房を併設し、カカオ豆の焙煎からチョコレートの仕上げまで、すべての行程をここで行っている。
ル・ショコラ・アラン・デュカス・マニュファクチュール・ア・パリ ル・ショコラ・アラン・デュカス・マニュファクチュール・ア・パリ Le Chocolat Alain Ducasse Manufacture a Paris 住所:40, rue de la Roquette 11e
TEL:01.48.05.82.86
www.lechocolat-alainducasse.com

(※2)アラン・デュカス氏が経営するオーベルジュ

ラ・バスティード・ド・ムスティエラ・バスティード・ド・ムスティエ
(ムスティエ・サント・マリー)

協力:ベージュ アラン・デュカス 東京
東京都中央区銀座医3-5-3 シャネル銀座ビルディング10F  Tel:03-5159-5500
写真:伊藤智郎 / 聞き手:坂井彰代